二人のランスロット

 

ハイム城地下牢
暗黑騎士ランスロット
「ふむ 。生きているのが不思議なほどだな 。下がれ!

場外の聲
『また暴動が發 中隊は 通りへ急げ 。』

暗黑騎士ランスロット
「聞こえるか?ゼノビアの聖騎士よ。

聖騎士ランスロット
「 貴公らが敗れるのも時間の問題だな。

暗黑騎士ランスロット
「我がローディスにとってヴァレリアの霸權など些細な問題にすぎん。
 それを知らぬわけではあるまい?

聖騎士ランスロット
「 。

場外の聲
『だめだ、ロスローリ 援護を要請するんだ 。我だけでは 動を抑え きない 。』

聖騎士ランスロット
「 日增しに高まる民眾の不滿を抑えきれないようだな ?

暗黑騎士ランスロット
「所詮、バクラム人は我とは違い劣等民族だからな。彼らには少荷が重すぎたということだ。

聖騎士ランスロット
「力で人を縛り付ける、そうしたローディスのやり方に問題がある、 そうは思わないのか?

暗黑騎士ランスロット
「縛り付けた覺えなどないな。彼らは力で支配されることを望んだのだ。

聖騎士ランスロット
「望んだだと?

暗黑騎士ランスロット
「そうだ。 世の中を見渡してみろ。どれだけの人間が自分だけの判斷で物事を成し遂げるというのだ?自らの手を污し、リスクを背負い、そして自分の足だけで步いていく 。
 そんな奴がどれだけこの世の中にいるというのだ?

聖騎士ランスロット
「 。

暗黑騎士ランスロット
「 貴公らの革命を思い出してみよ。貴公らが血を流し、命を懸けて守った民はどうだ?
 自分の身を安全な場所におきながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?

聖騎士ランスロット
「彼らは自分の生活を維持するだけで精一杯だったのだ 。

暗黑騎士ランスロット
「いや、違う。被害者でいるほうが樂なのだ。弱者だから不平を言うのではない。
 不滿をこぼしたいからこそ弱者の立場に身を置くのだ。彼らは望んで『弱者』になるのだよ。

聖騎士ランスロット
「ばかな 。人には自分の人生を決定する權利がある。自由があるのだ!

暗黑騎士ランスロット
「わからぬか!本當の自由とは誰かに与えてもらうものではない。
 自分で勝ち取るものだ。しかし民は自分以外にそれを求める。
 自分では何もしないくせに權利だけは主張する。
 救世主の登場を今か、今かと待っているくせに、自分がその救世主になろうとはしない。
 それが民だっ!

聖騎士ランスロット
「人はそこまで怠惰な動物じゃない。ただ、我ほど強くないだけだ。

暗黑騎士ランスロット
「 聖騎士よ、貴公は純粹すぎる。民に自分の夢を求めてはならない。支配者は与えるだけでよい。

聖騎士ランスロット
「何を与えるというのだ?

暗黑騎士ランスロット
「支配されるという特權をだっ!

聖騎士ランスロット
「ばかなことを!

暗黑騎士ランスロット
「人は生まれながらにして深い業を背負った生き物だ。
 幸せという快樂の為に他人を平氣で犧牲にする 。
 より樂な生活を望み、そのためなら人を殺すことだっていとわない。
 しかし、そうした者でも罪惡感を感じることはできる。彼らは思う 、これは自分のせいじゃない。
 世の中のせいだ、と。
 ならば、我が亂れた世を正そうではないか。秩序ある世界にしてやろう。
 快樂をむさぼることしかできぬ愚民にはふさわしい役目を与えてやろう。
 すべては我が管理するのだ!

聖騎士ランスロット
「意にそぐわぬものを虐げることが管理なのか!

暗黑騎士ランスロット
「虐げているのではない。
 我は病におかされたこの世界からその病因を取り除こうとしているにすぎん。
 他組織に影響を及ぼす前に惡質なガン細胞は排除されねばならぬのだ!

聖騎士ランスロット
「身体に自淨作用が備わっているように心にもそれを正そうというきはある!

暗黑騎士ランスロット
「それを待つというのか?ふふふ 貴公は人という動物を信用しすぎている。
 民はより力のある方へ、より安全なほうへ身を寄せるものだ。
 そのためなら愛するものを裏切ることもできる 。カチュア!

聖騎士ランスロット
「カ、カチュア !なぜ、君がここに ?

暗黑騎士ランスロット
「紹介しよう、聖騎士殿。彼女こそドルガルア王の忘れ形見にしてヴァレリアの正統の後繼者、
 ベルサリア王女だ!!

聖騎士ランスロット
「!!

暗黑騎士ランスロット
「貴公の指摘したとおり、バクラムはもうおしまいだ。
 しかし、彼女が我が手の內にある限りヴァレリアの民はローディスの下僕となろう。

聖騎士ランスロット
「カチュア 、君は 、いったい?

カチュア
「私はデニムを愛していたわ。たった一人の弟だもの。當然よね。
 でも弟じゃなかった 。そして、私を見捨てた 。手に入らないのなら、いっそ 。

聖騎士ランスロット
「カチュア!!

暗黑騎士ランスロット
「私の片目を奪った男と別れるのは惜しいが、これ以上、敗北者を痛めつけるつもりはないのでね。
 失禮させてもらうよ。

聖騎士ランスロット
「ま、待てっ!!

暗黑騎士ランスロット
「さらばだ、ゼノビアの聖騎士よ。

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