父と娘

 

ブリガンテス城一室
デニム
「父さん、僕だよ!デニムだよ!

プランシー神父
「デニムか 。よく來てくれた 。こっちへ 。

プランシー神父
「おまえに話さねばならぬことがある 。

デニム
「姊さんのことだね ?

プランシー神父
「知ってのとおり、カチュアはおまえの姊ではない 。
 やつらが言うようにドルガルア王の忘れ形見、ベルサリア王女だ 。

デニム
「 。

プランシー神父
「カチュアの母親は王妃の次女であったマナフロアという女性だ 。


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王妃ベルナータ
『 私に話しがあるそうね。なにかしら。』

マナフロア
『ベルナータ樣 。いとまをいただきとうございます。』

王妃ベルナータ
『どうして、急にそんな事を言うの?
 このわたしが宮中において心を許せるの はあなただけなのよ。知っているでしょ?マナフロア。

王妃ベルナータ
『私が氣づかないとでも思ったの?』

マナフロア
『 お許しを。』

王妃ベルナータ
『所詮、平民出の王には、貴女のような田舍娘がお似合いということね!』

マナフロア
『どうか、お許しを 。』

王妃ベルナータ
『誰が許すものですかッ!!誰が、貴女を !
 このまま、一生、私に仕えるのよ! 一生、私の奴隸にしてあげるッ!!いいわねッ!!』

王妃ベルナータ
『あ、貴女、まさかッ!!こ、子供までッ!!』


 こうして城を出た彼女はしばらくしてカチュアを產んだ 。


ブランタ神父
『マナフロアはどうだ ?』

ブランタ神父
『 そうか。
無理もない。衰弱しきっていたからな 。』

ブランタ神父
『その娘がベルサリアか。』

プランシー神父
『ベルサリア?』

ブランタ神父
『ああ。王がつけた名前だ。
 女子が生まれたらベルサリアと名づけようといっていたよ。』

プランシー神父
『やはり、王にお傳えすべきではないのか?』

ブランタ神父
『來月にはベルナータ樣にもお子さまが生まれるのだぞ!?
 この事を知っているのは俺とおまえだけでいい 。』

プランシー神父
『王女はどうする?』

ブランタ神父
『おまえが育てろ。先月、死んだおまえの娘 、カチュアといったか 、それと取り替えるのだ。』

プランシー神父
『自分の娘として 。育てろ と?』

ブランタ神父
『そうだ。それがその娘のためでもあり、ヴァレリアのためでもある。』

プランシー神父
『しかし 。』

ブランタ神父
『心配するな。あとはこの俺に任せろ。 そうだ。

ブランタ神父
『この首かざりをおまえにやろう。って金にするといい。』

プランシー神父
『これは ?』

ブランタ神父
『王からのたまわり物だ。王子ならその青い方を、王女なら赤い方を、誕生の祝いとして贈るつもりだったのだ。』

プランシー神父
『そんな大切なものをれるはずもなかろう!』

ブランタ神父
『子供を育てるのには金が必要だ。まして、その娘は王女樣だからな。
  平民出の神父にすぎん俺たちが金を手にするには、こんなことでもせんとな 。
 まあ、氣にするな。プランシー。』



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プランシー神父
「しかし、ブランタはこの私を欺いていた 。
 ヤツはマナフロアと王女の一件を使い、王妃に取り入って司祭の地位を手に入れたのだ 。

デニム
「 。

プランシー神父
「私は 、間違っていたと思う 。
 王子が亡くなられた時、カチュアを王の下へ差し出していれば、この戰亂が起きることはなかったはずだ 。
 しかし、私には 、私にはカ チュアを手放すことができなかった。
 『父さん』と呼んでくれる子を手放すことができなかったのだ 。

デニム
「父さん 。

プランシー神父
「暗黑騎士團はずっとカチュアを探していた 。
 それはカチュアをヴァレリアの王にする為ではない 。まったく別の目的の為だ 。

デニム
「別の目的?

プランシー神父
「そうだ 。王女として祭り上げたのは『ついで』にすぎん 。
 やつらの狙いはドルガルア王の遺產なのだ 。

デニム
「ドルガルア王の遺產!?

プランシー神父
「その正体が何かは分からない 。
 ただ、それが王の墓にあることだけがわかっている 。
 カチュアを手に入れたやつらは今、王の墓を血眼になって探している 。

デニム
「それを知っているのは姊さんだけなんだね?

プランシー神父
「いや、それは違う 。カチュアは何も知らない 。
 ただ、墳墓の扉の封印を解くことができるのは王の血を受け繼いだものだけなのだ 。

デニム
「姊さんは利用されている?

プランシー神父
「そうだ。その役目が終わればカチュアはやつらに グホッ、グホッ。

デニム
「父さん、しっかりして!

プランシー神父
「よいか、デニム!カチュアを救ってやってくれ !
 カチュアを助け、この戰亂を終わらせることができるのはおまえしかいないのだ ! グホッ!

デニム
「父さんッ!!

プランシー神父
「 モルーバ樣を搜せッ!
 フィラーハ教の大神官だったモルーバ樣を搜すのだ 。
 きっと、おまえの力になってくれる 。

デニム
「父さん、もうしゃべらないでッ!

プランシー神父
「おのれを棄てろ 、大儀の為のいしずえとなれ 。
 現實をきちんと見すえて、よりよい選擇肢をえらぶのだ 。
 おまえは 次の世代のために道をつくるだけでよい それを 忘れるな 。

デニム
「父さんッ!しっかり、しっかりしてッ!!

プランシー神父
「 デニム すまな い

デニム
「父さーんッ!!!

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